Chapter-9
村の聖域
パートナーが♂口調 
パートナーが♀口調
次の朝……
（ううっ ねむい……。）
（明け方まで お説教だったんで
ほとんど ねむれなかったよ……。）
（まあ 夜だまって ぬけだしちゃった
ワケだから……）
（しかられるのも 仕方がないと
思うけど。）
（パートナーは
どうしてるんだろう……。）
（まだ しかられてるのかな……。）
コノハナ
おっ！ おはよう！ 起きたか！
コノハナ
昨日は いっぱい おこられちまったな。
コノハナ
ただ アバゴーラは オメーたちのことを
思って……
コノハナ
オメーたちを心配して しかって
くれてるんだからな？
コノハナ
そこは受け止めてくれよな。
コノハナ
うん！ よかった！
コノハナ
ところで その後 記憶の方はどうだ？
コノハナ
なにか思い出したりしたか？
コノハナ
そうか……まあ あせる必要も
ないと思うが……。
コノハナ
この世界にも なれてきたと思うし
いろいろ調べてみるといいかもな。
コノハナ
アバゴーラは あんな感じで なにかと
止めたがるが……
コノハナ
オラは 子どものうちは いろんな体験を
した方がいいと思ってる。
コノハナ
冒険は 危険もついてまわるが そこから
学べることも多いと思うんだど。
（前も思ったけど……）
（コノハナって冒険にかんしては
けっこう ゆるしてくれるよね。）
コノハナ
なので 村のあちこちを冒険してみると
いいと思うだど。
コノハナ
もちろん オーベムたちには
気をつけなきゃいけないが……
コノハナ
夏休みだし いろいろ自由にいってみると
いいんでねえかな。
アバゴーラ
コラッ！ パートナー！
もっとちゃんと ふかんか！
パートナー
よし！ 終わり！！
アバゴーラ
どこが終わりじゃ！
アバゴーラ
ホラ！ ここも！ あそこも！
アバゴーラ
ふき残しばかりじゃろうが！
パートナー
ふいたよ！ 終わり！
ぜえぜえぜえ……。
アバゴーラ
ダメじゃ！ ザツすぎる！
アバゴーラ
そうじ やり直し！！
パートナー
ええ～～～～～っ！？
（そうじを しているのかな……。）
（これは……紙きれ……？）
（……！）
（パートナーの書きおきだ……！
～ リーダーへ ～
ゴメン。今日は いっしょに
あそべなくなった。
昨日の反省で ずっと家のそうじを
やらされることになったんだ……。
なので 今日は 調査団見習いは
お休みにしよう。
ホント つきあえなくて ゴメンね。
～ パートナーより ～
（パートナー 大変そうだな……。）
まあ 1日だけだし……）
（だれか さそって ダンジョンに
いってみるか……。）
チョボマキ
ええ～！？ 昨日のこと
バレちゃったの！？
シキジカ
それで 2匹とも お説教を！？
ヌメラ
そっか……お説教は ちょっと
かわいそうだけど……
シキジカ
でも ワタシたちも 親に だまってるのが
気になったワケだから……
ニャスパー
これで よかったのかもね……。
シキジカ
昨日の夜 リーダーたちと
別れたあと……
シキジカ
実は ワタシたち 家に帰る前に
話し合ったの。
シキジカ
かくれて帰るより 親にちゃんと
話した方が いいんじゃないかって。
ヌメラ
それで思いきって みんな 帰ってすぐに
お父さん お母さんに打ち明けてみたんだ。
ニャスパー
反応は いろいろだったみたいよ♪
ヤンチャム
オレなんか かあちゃんに こっぴどく
おこられちまって……
ヤンチャム
ああ うるさすぎて まだ
頭がいてえ……。
チョボマキ
オレも すげー しかられた……。
ヌメラ
みんな おこられたんだよ。
もちろん ボクも……。
ヌメラ
でも かあさん 泣いてた……。
シキジカ
いっぱい心配してた……。
シキジカ
ワタシたち たくさん
思われてるんだなって……。
ニャスパー
しかってもらえるだけ いいよ。
ニャスパー
ワタシには そうしてくれる親も
いないしね。
シキジカ
なので 打ち明けてよかったねって
さっき みんなで話していたところなの。
（そうだったのか……。）
ニャスパー
だから パートナーたちは 別れたあと
どうだったのか気になってたんだけど……
ヤンチャム
ちゃんと お説教 食らってるなら
安心したぜ！
チョボマキ
パートナーたちは 親に 話した
んじゃなく バレたんだけどな！
ヤンチャム
それで……リーダーは これから
ダンジョンへ冒険にいきたいのか？
ヤンチャム
この中の だれかと いっしょに？
ニャスパー
なんか楽しそうね♪
ニャスパー
ワタシは オッケーよ♪
ヤンチャム
オレもいいぜ。
ヤンチャム
オマエには かりがあるしな。
チョボマキ
かりなら オレもあることになるな。
ヌメラ
ボクも いいよ♪
シキジカ
みんな いきたいみたいね。
もちろん ワタシも。
シキジカ
リーダー。この中から だれと
いっしょにダンジョンにいくか えらんで。
（えーと それじゃあ……）
パートナー
おじい！ これでどうお！？
アバゴーラ
……まだまだ ざつじゃが
まあ いいじゃろう！
アバゴーラ
終わりじゃ！
パートナー
やったー！ やっと そうじが
終わったーー！
パートナー
じゃあ！
アバゴーラ
おい！ コラ！ どこにいく！？
パートナー
あっ！ リーダー！
パートナー
やっと そうじが終わったよ～！
今日は ゴメンね！！
パートナー
でも 明日から また調査団見習いが
できそうだから よろしくね！
コノハナ
おっ！ リーダー！ 帰ってきたか！
パートナー
あっ！ コノハナさん！
コノハナ
パートナーも いっしょか。
コノハナ
アバゴーラじいさんに だいぶ
とっちめられたみたいだな。
パートナー
うん。でも 今回おこられたのは
仕方ないと思ってるし……
パートナー
しかられるのも いつものことだから
へこんだりはしてないよ。
コノハナ
そうか。そう思ってくれるなら
なによりだ。
コノハナ
もっとも オラは 子どものうちから
冒険してほしいとは思ってるがな。
パートナー
そうなの？ おじいと ちがうんだ。
パートナー
おじい まちがってるの？
コノハナ
まちがっちゃいねえ。
心配だから いろいろ いうだけだ。
コノハナ
でもオラは そこまで心配していない。
それぞれの考えがあってのことだど。
コノハナ
オラ自身 冒険が好きだから
そう思うのかもしれねえ。
パートナー
そうなんだ。
パートナー
コノハナさんは 村だったらどこらへんを
冒険してみたいの？
コノハナ
村の近くだったら……そうだな……
コノハナ
テンケイ山とか いってみてえな。
パートナー
テンケイ山って……あのテンケイ山！？
パートナー
でも テンケイ山は 神聖な山と
されていて……
パートナー
ぜったいに いっちゃいけないって
いわれてるよ！？
コノハナ
まあ そうだが……すごく神秘的で
くすぐられるものを感じねえか？
コノハナ
オラ この村に越してきたのも
最近だし……
コノハナ
なんで いっちゃいけねえのか
知らねえが……
コノハナ
ちょっと のぞいてみるだけなら
だいじょうぶじゃないかな。
パートナー
たしかに くすぐられるものは
あるけど……
パートナー
でも いったら メチャクチャ
おこられそうだなあ……。
コノハナ
ハハハッ！ だったら いかねえこった！
コノハナ
とにかく オラがいいてえのは
冒険心をなくしたら ダメだってことだ。
コノハナ
そして そのためには 時には思い切りも
必要だど。
コノハナ
少しぐらい ハメはずしてもいいと
オラは思ってる。
コノハナ
まあ明日から がんばってみるんだど。
このあと リーダーと パートナーは
夕方まで ちょっとだけ あそんでから別れたのでした
次の朝……
パートナー
リーダー！ おはよー！
パートナー
今日も がんばろうね！
パートナー
あれ？ あれは……？
パートナー
ペリッパーだ！
パートナー
今の ペリッパーよね？
パートナー
なんか あったの？
ハスブレロ
号外を知らせてくれたんだ。
ハスブレロ
最近 ポケモンが石にされる事件が
起きているらしい。
パートナー
ええ～！？ ポケモンが石に～！？
パートナー
石って カッチカチの石っころのこと？
どうしてポケモンが？
ラッタ
まったく わからねえ。
ヒポポタス
初メテ聞イタヨ。
ポケモンガ石ニナルナンテ。
パートナー
村でも起こってるの？
ロゼリア
いいえ。平和そのものよ。
ロゼリア
村では 今のところそんな様子は
ないわ。
ハスブレロ
ワイワイタウンとか どこか遠くのところで
起きてるのかなあ？
パートナー
そっかぁ。ここは いなかだし……
パートナー
村の外のことは まだまだ
知らないことが多いよね。
パートナー
ワタシも早く外に出たいなあ。
ハスブレロ
オ…オマエは まだ子どもだろ？
ラッタ
世の中は 危険なことが いっぱい
なんだぜ？
ヒポポタス
ソレコソ 石ニ サレチャウカモ
シレナイヨ？
パートナー
ううっ……わ…わかったよ……。
パートナー
大きくなるまで ガマンするよ……。
パートナー
あっ！ おじい！
アバゴーラ
オマエたちか。
アバゴーラ
今から帰るところなのか？
パートナー
うん。
アバゴーラ
そうか。ちょうどよかった。
アバゴーラ
これから 夕飯の支度をするところじゃ。
オマエも帰って手伝え。
パートナー
ええ～っ！？
アバゴーラ
そのかわり いつもより うんと
ウマイもん食わしてやるぞ。どうじゃ？
パートナー
わかった！
パートナー
ウマイもんが食べられるのなら
やるしかない！ 手伝うよ！
アバゴーラ
決まりじゃな。いくぞ。
パートナー
あっ！ あの おじい！
アバゴーラ
なんじゃ？
パートナー
テンケイ山って どんな山なの？
パートナー
入っちゃいけないというのは
知ってるんだけど……。
アバゴーラ
そうじゃ。テンケイ山は 昔から
村の聖域とされておる。
アバゴーラ
先祖代々からの言い伝えでな。
パートナー
どうして いっちゃいけないの？
アバゴーラ
わからん。
パートナー
ええっ！？ わからないの！？
パートナー
テンケイ山には なにがあるの？
アバゴーラ
それも わからん。たぶん神聖な
なにかが あるんじゃろうな。
アバゴーラ
とにかく ワシら おだやか村の民は
テンケイ山を守ることを習わしとしてきた。
アバゴーラ
先祖代々 それを受け継いできたのじゃ。
アバゴーラ
オ…オマエたち！ まさか！
テンケイ山にいくつもりじゃ……！
パートナー
い…いや！ いかないよ！
パートナー
コノハナさんが テンケイ山は
神秘的だっていってたのを思い出して……
パートナー
そういえば どうして いっちゃ
いけないんだろうなって思って。
アバゴーラ
そうか。それならよい。
アバゴーラ
とにかく いってはダメじゃからな。
アバゴーラ
よし。では 帰ってご飯の支度を
するかの。
アバゴーラ
リーダーも手伝うか？
パートナー
やった！ じゃ みんなで ウマイもん
食べよっ！
次の朝……
パートナー
リーダー！ おはよー！
パートナー
今日も がんばろうね！
パートナー
さてと リーダー。
今日は どこいこっか？
コノハナ
ちょっと。オメーたち。
パートナー
あれ？ コノハナさん？
コノハナ
こっちこっち。
パートナー
どうしたの！？ コノハナさん！
コノハナ
わーっ！ 声がでかい！
コノハナ
ちょっと相談があるだど。
コノハナ
こっちに くるだど。
パートナー
ええっ！？ テンケイ山にっ！？
コノハナ
いや だから声がでかいって。
コノハナ
ナイショでいくんだから もっと小声で
たのむだど。
パートナー
で…でも ぜったいに いっちゃ
いけないって 昨日も おじいに……。
コノハナ
オラも そう考えてたんだが
ふと思ったことがあってよ……。
パートナー
思ったこと？
コノハナ
リーダーのことだど。
パートナー
リーダーの……？
コノハナ
ああ。
コノハナ
リーダーが もとは人間で 記憶を
なくしていることはオメーも知ってるだろ？
コノハナ
なんとなくだけど これには大きな秘密が
あるんじゃねえかと思っててな……
コノハナ
しばらくすれば なにか わかるんじゃ
ないと 様子を見てたんだが……
コノハナ
今のところ まるで わからねえ。
リーダーの記憶も まだ もどらないしな。
コノハナ
だから ちょっと調べてみようと。
パートナー
それで テンケイ山に……？
コノハナ
ああ。
コノハナ
テンケイ山は なぞのベールに
包まれている。
コノハナ
村のポケモンたちに聞いても知らねえの
一点張りだ。
コノハナ
もしかしたら ホントは知っているのに
うそをついているのかもしれねえが……。
コノハナ
とにかく この村では 昔からずっと
その秘密を守り通している。
コノハナ
これは オラのカンだが……
コノハナ
テンケイ山は リーダーが
ポケモンになったことと……
コノハナ
もしかしたら関係があるんじゃないか
っていう気がしてきたんだ。
パートナー
リーダーが……！？
（自分がポケモンになったことと
テンケイ山に関係が……！？）
コノハナ
もちろん オラの思いすごしかもしれねえ。
コノハナ
ただ いってみないことには
わからないだろ？
コノハナ
ちょっと のぞきにいくだけだ
ヤバそうなら すぐに中止する。
コノハナ
どうだ？ いっしょに いくか？
パートナー
まあ……リーダーに関係が
あるのなら……
（いく価値はあるかな……。）
（だれにも めいわくを かけなければ
だけど……。）
コノハナ
おっ。いく気になったみたいだな。
コノハナ
では さっそくいくか。テンケイ山は
村の出口からいけるだど。
コノハナ
そんじゃ いくか。
コノハナ
目立たず そっとな。
ヒポポタス
今日ハ ワターシガ門番ダヨ～。
ヒポポタス
ダレモ コナイカラ ヒマダヨ～。
ヒポポタス
デモ ダレカ キタラ オイカエスンダヨ～。
（あそこが テンケイ山への入口か……。）
パートナー
今日の当番は ヒポポタスみたいだね。
コノハナ
村のみんなで持ち回りだからな。
パートナー
それで……どうするの？
コノハナ
オラに まかせるだど。
ヒポポタス
アレ？ コノハナサン？
ヒポポタス
ドウシタノ？
コノハナ
スマン。さっき わかったんだが
当番が まちがってただど。
コノハナ
今日は オラが当番をやる日だった
みたいだど。
ヒポポタス
ソ…ソウナノカ！？
ヒポポタス
知ラセテクレテ アリガトウ！
ヒポポタス
正直イウト ワターシ 門番ヤルノ
好キジャナインダヨネ。ヒマダシ。
ヒポポタス
ジャ！ アトヨロシクネ！
コノハナ
うまくいっただど。
パートナー
じゃ いってみよっか。この奥へ。
テンケイ山へ
コノハナ
……だいぶ奥まで きただど……。
パートナー
あっ！ あっちに！
パートナー
少し ひらけたところが……！
コノハナ
いってみるだど！
コノハナ
ほ…保安官たちがいるだど！
パートナー
スピアーやニョロボンまで 門番に
かりだされてるね。
コノハナ
正直いって ここまで けいびが
げんじゅうだとは思わなかっただど。
パートナー
ここを突破したら さすがに おおごとに
なっちゃいそうだよね。
コノハナ
残念だが ここまでだな。
コノハナ
引き返すだど。
コノハナ
うーん 残念だど……
コノハナ
もう少し先に進めば なにか
わかったかもしれないが……。
コノハナ
リーダー すまねえ。
コノハナ
リーダーが この世界にきた
なぞも……
コノハナ
もしかしたら キッカケぐらいは
わかったかもしれねえのに……。
パートナー
仕方ないよ。あれだけ みんなが
見張ってるんだから。
パートナー
おじいも いってたように あそこは
村の聖域。
パートナー
いったら よくない気もしてたし
これで よかったんだと思うよ。
コノハナ
そうだな……。
コノハナ
さてと……とりあえず オラは これから
ヒポポタスに会ってくるだど。
コノハナ
当番の まちがいは まちがいでした
（ややこしい）って あやまらなきゃ。
コノハナ
なので先に帰っててくれだど。
コノハナ
じゃ。
パートナー
じゃ ワタシたちは 家に帰ろっか。
（結局 テンケイ山にいっても なにも
つかめなかったな……。）
（ホント 自分は なんでポケモンに
なっちゃったんだろう……。）
（しばらくすれば そのうち記憶も
もどるだろうし……）
（とりあえず ここにいれば いろいろ
わかってくるだろうって思ってたけど……）
（なんだか ずっと わからない
気もしてきた……。）
（あと オーベムたちのことも
気になるし……。）
（今は だいじょうぶだけど……もし
オーベムたちが ここに きたら……）
（………………。）
（村のみんなを まきこみたくは
ないな……。）
（だったら やっぱり……）
（そろそろ動くべきなんじゃ……。）
（村を はなれるべきなのかも
しれない……。）
（パートナーと……みんなと
お別れすることになるけど……）
（それでも……みんなに めいわくを
かけるよりは……。）
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